2016年10月24日 (月曜日)
アップサイドダウンの魅力~高級時計専門サイト Quill & Pad より~

みなさま、こんにちは。

大変お待たせ致しました。

ルドヴィック・バルアーの「アップサイドダウン」の技術的な詳細に
関する記事を、高級時計専門サイト Quill & Pad から改めまして
ご紹介させて頂きます。

タイトルは
「混乱が畏敬の念への道を拓く時
(When Confusion Paves The Way To Awe)」

 原文はこちら→
When Confusion Paves The Way to Awe: The Ludovic Ballouard
Upside Down

自称時計オタクであるジョシュア・マンチョー氏が、ルドヴィックの
アップサイドダウンの魅力について熱く語っていますが、文章全体
(特に前置き)が長くなっておりますので、要旨を読まれたい方は
太字の部分を先にお読みください。


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我々が住んでいる世の中はとても複雑で、ときには全てが大混乱と
なることがある。

ニュースを見ていると、こちらの国やあちらの国で一体何が起きて
いるのか、自分の近くのことですら、わけが分からないことが多い
世の中だ。

そういう世の中に生きていると、とても困惑することがままある。
 
困惑が極まると、それは医学的に病気と認められたものにすらなる。
錯乱や妄想を伴なうような急性の錯乱状態は一時的な記憶や方向性の
喪失につながっている。

直線的な思考が不可能となり、自分がいつ、どこにいるのか、
自分が誰であるのか分からなくなったり、また最近の出来事すら
忘れてしまう。

このような深刻な錯乱状態は薬剤に対する反応や脳の損傷、
認知症の発病などによって引き起こされるものである。
 
とはいえ、認知症や脳の損傷とは関係のない錯乱状態もある。
軽い錯乱状態は、自分が当然と思っていることが突然、または微妙に
裏切られたときに起こりうる。

例えば、飛行機から下りてきた友人を抱きしめようと走り寄ったら
その人が違う人だったと気付いたときの困惑などがそうである。

自分が期待していたものと見ているものの差異に戸惑い、友人と
赤の他人を間違えたことに恥を覚えるだろう。
 
それは、脳が「友達」だと思っていたのが、走りよったときに
「友達」が「他人」に突然、変わったからである。

脳は自分の間違いを理解するのに苦労する。
もしかすると、友達は他人の横にいたのに、脳が友達の顔と他人の
コートの2つをつなげてしまったのかもしれない。
しかし、それにしても、「なぜ」このような間違いが起きたのかが
分からないうちは、困惑と混乱に満たされ、もしかすると騙された
ことに対する怒りまで感じるかもしれない。

しかし、困惑の原因が明らかになり、実は友達は間違って抱きしめ
ようとした他人のすぐ後ろにいることが分かると、困惑や混乱は
消えて、続いて恥ずかしさも消え、場合によっては「面白い」という
気持ちに変わるだろう。
 
このような混乱は我々が日常的に体験しているものである。

サンドイッチを冷蔵庫のヨーグルトの横にしまったと「分かっていた」
はずなのに、そのサンドイッチが違う棚にしまってあると一時的な
混乱を覚える。

私は忙しいときに、工具が四方八方に散らかっていて、突然そこにある
はずだったドライバーや消えてしまうことがある。
一分後にそのドライバーが金槌の上、いや下に見つかる。
見つかるまでは大変な混乱状態におちいる。
たくさんの情報量を取り入れているときや、非常に熱心に何かに集中
しているときに特にこのようなことが起こりやすい。

これは自分の周囲に対する注意度が落ちているからだろう。
突然、訳が分からないことが起きたときはショックと戸惑いを覚える
のである。
 
バルアーのアップサイドダウンをはじめた見たときに感じたのもまさに
このような戸惑いと混乱であった。

なんで自分が混乱しているのかも分からないまま、とにかく、何かが違う
、と感じたのだ。

そして次の瞬間に気がついた。

数字が全て逆さなのだ。

混乱はまだ続くが、取っ掛かりができた。
さらに30秒くらい経過したところで、一つだけ逆さでない数字が
あることに気付いたときに、混乱は驚異に変わった。

なぜこの作品が素晴らしいのか、なんで一見普通に見えながら、実は
ものすごく変わった作品であったのかという理解の始まりである。
 
アップサイドダウンはジャンピングアワーの腕時計で、現在の時間以外の
数字は逆さに表示されている。
逆さでない数字が今の時間で、その隣りには小さなドット表示もあり、
理解を助けてくれる。

各数字のドットは、自分の時間がまわってくるまで、数字表示デイスクの
縁の外側に隠されるように位置されている。
 
とてもエレガントで悪戯心いっぱいのデザインだが、そのメカニズムは
もっと興味深い。

ペスー7001(ムーブメントの名称)の面影を持つが、ムーブメントは
ほとんど全てバルアーの独自開発によるもので、全く素晴らしすぎるとしか
言えないものなのだ。
 
このメカニズムのデザインの素晴らしさに惚れているので説明させて欲しい。
 
まずは分の歯車から全てが始まる。

これがムーブメントの裏にある「スネイルカム」と連動していて、全てを
動かす要となる。

スネイルカムにはレバーがつながっているが、このレバーの先端には2つ目の
レバーがあり、これがバネの力で外周のリングを抑える役目を果たしている。

この外周のリングには24の歯が刻まれているが、その歯には2種類の形が
ある。
 
スネイルカムが一時間で一周して、正時になると、二重レバーの一つ目の
レバーがスネイルカムの最も低い位置にカクッと落ち、2つ目のレバーが
外周リングの歯に引っかかって次の位置に進める。

同時に、バネによってその位置に固定される。
 
このときに、外周がまるでダンスのように一斉に動く。
リングの外側に4つの歯が刻まれていて、それらが12のジュネーブ式歯車と
連動している。

マルタ十字型歯車とも呼ばれるこれらの歯車は文字盤の数字を動かしている。
十字の一つずつには4つのくぼみがあるが、4つの歯が文字盤の数字を360度
回転させるしくみとなっている。
 
正時になって外周リングが回転すると、2つの歯が連続する2つの十字型歯車に
ひっかかってそれぞれを180度回転させる。
そうすることによって、2つの数字が今までと逆さになる。

新しい時間の数字は正しい方向に表示されるように、そしてすぐ隣りの過ぎた
時間の数字は逆さになるというしくみだ。
 
一時間過ぎるごとに、2つの数字がリングの4つの歯にひっかかって、180度ずつ
回転することになる。
 
お見事と言うしかないしくみだ。

あまりにも素晴らしいので、ムーブメントが見えるような特別版をリクエスト
したいくらいだ。

十字形の歯車にサファイアを付けて、透明な数字の向こうにムーブメントが
透けてみえるようなものを、バルアーさん、どうかどうか作ってください。
 
バーゼルワールドで、ルドヴィック•バルアー本人に会うという光栄なチャンスに
恵まれたが、そのときにマザー・オブ・パールの象嵌細工の文字盤を持つ
アップサイドダウンの最新バージョンを見せてもらった。

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素晴らしいの一言に尽きるが、12本の限定版でケースはレッドゴールド。
私が見せてもらったのはプラチナケースだったが、これはユニークピース
だったのかもしれない。
(注:実際にはレッドゴールド12個、プラチナ12個の限定版。
   プラチナの12個の内1つはベゼルにダイヤモンドが施された
   ユニークピースです。弊社でご覧になれます。)
 
何年も前からネットなどの写真でこの作品を見てきたが、実際に手に取って
見ることはメカオタクの自分にとってはしびれる体験だった。
 
バルアーのアップサイドダウンは、その素晴らしいムーブメントを知らない人に
とっては混乱を招く作品だが、その秘訣を知る者にとってはこの上なく欲しい
作品だ。

最初にこの作品を見たときの居心地悪い困惑は今や懐かしいもので、さらに
この作品の楽しみを深めてくれている。
 
ということで、この作品の総合評価は:

◆Wow(驚き)度:8点。 最初の困惑が過ぎると大きなWow!に変わる
              スリーパーウオッチ。

◆欲しくてたまらない度:94.87点。 朝方まで欲望をかきたてる作品。

◆オタク度:68.99点。バルアーはFPジュルヌやフランク•ミュラーの
      弟子だっただけに、ムーブメントのオタク度は高い。

◆その他の機能:なし。
        多くの素晴らしい作品同様、この時計は時間表示以外の機能は
        ない。技術的には非常に仕掛けの多い作品だが、表示は時間のみ。

◆イテテ度:バスにひかれるリスクを考えても、いつまでも着けていたい作品?

◆人魚度:困惑感が過ぎるとすっかり惚れてしまう作品。
     惚れられないあなたはいつまでも独身の身かも・・・。

◆スゴイ度:684。ムーブメントの部品数228に耐水圧3をかけた数字が
      この時計のスゴさを表す!

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いかがでしたでしょうか。


このような記事のご紹介をこれからも少しずつしていければと
思っております。

ご不明な点等ございましたらどうぞご遠慮なくお声掛けくださいませ。


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